本研究の目的は、格子量子色力学シミュレーションを用いたエキゾチックハドロン候補状態の性質解明である。エキゾチックハドロンとは、従来良く知られている中間子及び重粒子に該当しない新形態粒子である。現在までに、幾つかのエキゾチックハドロン候補が、理論的及び実験的に挙げられている。ただし、未だにエキゾチックハドロンの存在が確立したとは言い難い。本研究では、エキゾチックハドロン候補状態の性質を格子量子色力学計算により定量的に明らかにし、真にエキゾチックハドロンかどうか判定する。 研究目的達成のため、本年度は、Ds中間子系の質量スペクトル計算を行った。Ds中間子は、チャームクォーク及びストレンジクォークから構成される粒子である。このDs中間子系のスカラー状態Ds0(2317)及び軸性ベクトル状態Ds1(2460)の質量は、標準的なポテンシャル模型から予想される値とは一致しない。このため、両者をエキゾチックハドロンとする様々な模型が提案されている。本研究では、Ds0(2317)及びDs1(2460)を通常の2クォークから成る中間子として捉え、これらの質量を計算した。その結果、我々の計算結果は実験値を再現した。即ち、Ds0(2317)及びDs1(2460)はエキゾチックハドロンではなく、2クォークから成る中間子である事を示した。 この成果を踏まえ、平成23年度には、X(3872)状態等に対する研究を進める。
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