物質を構成する最小の粒子はクォークであると考えられている。従来知られていたのはクォーク2つないし3つから成るハドロンであったが、2003年以降、クォーク4つ以上の結合状態であるエキゾチックなハドロンの発見が相次いだ。しかしながら、クォーク5つの結合状態であるペンタクォークΘ^+については、実験によって信号の有無が異なり、存在は確定していない。 J-PARC E19実験では、π^-p→K^-X反応においてペンタクォークΘ^+を探索する。J-PARCハドロン実験施設のK1.8ビームラインにスペクトロメータを建設し、初めての物理データ収集を行った。過去に同じ反応でΘ^+を探索した実験では、統計精度が十分でないながらΘ^+の信号と思われる構造を観測していた。これを受け、今回はビーム運動量を過去の実験と同じ1.92GeV/cに設定し測定を行った。 Θ^+は崩壊幅が1MeV/c^2程度と非常に狭いことが大きな特徴である。この実験ではミッシングマス法によってΘ^+を同定するため、ビーム粒子であるπ中間子を測定するためのビームラインスペクトロメータ、および散乱粒子であるK中間子を測定するための超伝導電磁石を用いたSKSスペクトロメータの双方が高い質量分解能を持つことが重要である。 このため、πp→KX反応を用いてΣ粒子を生成し、スペクトロメータの性能評価を行った。その結果、1.9MeV/c^2という高い分解能を実現していることが確認された。これはΘ^+の測定では1.4MeV/c^2の質量分解能が達成されていることを意味する。また、観測されたΣ粒子の生成断面積は過去の実験とよく一致し、各検出器の検出効率などがよく理解できていることも証明された。 今後は取得した物理データの解析を進め、Θ^+の同定をめざす。
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