有機合成上極めて重要なエステル、アミド、カルボン酸、ケトンといったカルボニル化合物を得られる、一酸化炭素を用いたカルボニル化反応は大変有用であるが、通常、加圧・加熱条件を要し、スケールアップには危険も伴う。そこで、一酸化炭素の微小泡(ナノ・マイクロバブル)を含む水を本反応の気体源として利用することにより、気液界面積が飛躍的に増大し、反応が加速するのではないかと考えた。また、マイクロフローリアクターを用いることにより、スケールアップも安全に行えるものと期待して研究に着手した。本年度の研究実施計画に従い、まず、市販ナノバブル生成装置を利用して、一酸化炭素微小泡水を調製した。次に、調製した微小泡水中の一酸化炭素濃度を測定した。その結果、予測と比べて一酸化炭素濃度が低いことが示唆された。そこで、旋断混合機を用い、一酸化炭素微小泡水を調製することとした。本方法と通常のマグネチックスターラーによる撹拌法でカルボニル化反応を試行した結果、旋断混合機による撹拌条件において、顕著な反応加速効果が観察された。さらに、同手法をマイクロフロー反応へ展開したところ、さらなる反応加速効果が観察され、水中、室温、常圧下においても極めて速やかにカルボニル化反応が進行することが分かった。本手法は今後カルボニル化反応以外の気液二相系反応にも広く応用できる可能性を秘めており、得られた結果の意義は大変大きいと考えている。
|