研究概要 |
窒素ヘテロ環化合物は,医薬品を始めとする,多くの生物活性物質に含まれる重要な化合物群である。そこで我々は,含窒素ヘテロ環化合物の新合成手法の開発を目指し,「同一時間的反応集積化」に焦点をあて,以下の三つの柱からなる研究課題を中心に推進することとした((1)四級不斉炭素をもつα,α-二置換オキシインドールの触媒的合成,(2)多成分連結反応を鍵とするインドールの迅速合成,(3)イソシアナートとアレンとの不斉[2+2+2]付加環化反応)。今年度は研究の都合上(1)と(3)の新規分子変換法を中心に開発した。 我々は既にロジウムやパラジウム触媒存在下,2-(アルキニル)アリールイソシアナートにプロトン性求核剤を作用させると,立体選択的に3-アルキリデンオキシインドールが得られることを見出している。今回,この研究過程で2-(アルキニル)アリールイソシアナートにベンジルアルコールを作用させると,先に述べた3-アルキリデンオキシインドールも生成するが,反応条件を適切に選択することで四級不斉炭素をもつα,α-二置換オキシインドールが得られることを見出した。さらに不斉化を目指し,反応条件の最適化を行ったところ,フェロセン型配位子である(S,S)-f-Binaphaneを用いると38%の鏡像体過剰率で生成物が得られた。 さて,遷移金属触媒を用いる[2+2+2]付加環化反応は高効率な環状骨格構築法であるが,分子間反応では化学及び位置選択性を制御することがしばしば困難であるため,ジインなどを基質として用いる分子内反応が一般的である。今回,我々は不斉ニッケル触媒の存在下でイソシアナートにアレンを作用させると,イソシアナート2分子とアレン1分子との分子間[2+2+2]付加環化反応が進行し,ジヒドロピリミジン-2,4-ジオンがエナンチオ選択的に得られることを見出した。
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