有機合成化学をより高効率な物質合成法へと再構築し、生物活性化合物を真に効率的に合成するためには、ドミノ型反応や多成分反応を含む同一時空間反応集積化により連続的に結合を形成するとともに、時間的反応集積化により、可能な限り反応をワンポット化してコスト・溶媒・廃棄物の削減を図る必要がある。報告者は昨年度の本研究において、多成分反応やC-H結合活性化反応と環化反応の集積化を基盤とした効率的複素環骨格構築法の開発研究を行い、パラジウム触媒を用いた環化反応の集積化によるErgotアルカロイド類の合成、金触媒を用いた環化反応の集積化による高度縮環型カルバゾールの合成、およびTHF環構築-立体選択的官能基化反応の集積化によるJaspineBの合成に成功した。今年度の本研究においては、反応集積化による生物活性化合物の合成を目的として、触媒的三成分カップリングと環化反応の同一時空間集積化によるジヒドロピラゾール誘導体およびアザインドール誘導体の一挙合成と、CK2阻害剤創製への応用研究等を行った。 多様性指向型合成法の開発は、創薬研究を効率よく推進する上で極めて重要である。報告者は、数多くの医薬品や生理活性天然物に含まれる多置換ピラゾール骨格の多様性指向型合成法の開発を目的として、三成分連結型環化反応による多置換ジヒドロピラゾール誘導体の一挙構築反応の開発を行った。検討の結果、Mannich型カップリングと5-endo-dig型環化反応の同一時空間集積化によるジヒドロピラゾール誘導体の効率的合成に成功した。さらに、当研究室が開発した三成分インドール合成法を基盤として、銅触媒を用いたアザインドール骨格の一挙構築反応と、触媒的C-H結合活性化の同一時空間集積化によるドラッグライク多環式複素環の一挙構築を見出した。引き続き、新規CK2阻害剤の開発を目指したモデル研究を実施し、多成分反応の同一時空間集積化が生物活性化合物を創出する上で極めて有用であることを示した。
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