研究概要 |
パラジウム触媒存在下ポルフィリンのβ位を臭化アリールを用いて直接アリール化することに成功した。すなわち、N,N-ジメチルアセトアミド中、酢酸パラジウム/DavePhos触媒、炭酸カリウム、およびピバル酸の存在下、トリアリールポルフィリンニッケル錯体に対して臭化アリールを作用させ加熱すると、立体的に空いている二カ所のβ位がアリール化され、対応する生成物が効率よく得られた。ハロゲン化アリールの適用範囲は広く、様々な官能基を有するアリール基を導入することができた。本手法はジアリールポルフィリンのテトラアリール化にも適用できる。同一時空間反応集積化に基づくポルフィリン類の新規高効率周辺修飾法として有望である。 反応は位置選択的に進行し、meso位がアリール化された生成物は認められない。X線結晶構造解析によりβ位に導入されたアリール基とポルフィリン平面の二面角は約50°であり、ポルフィリンのπ電子系がアリール基上まで拡張されていることが示唆される。実際、導入されたアリール基の電子状態に応じて、紫外可視吸収スペクトルならびに酸化還元電位に摂動が見られることが明らかになっている。 同様の複数アリール化はTTFに対しても適用できる。得られたテトラアリール化体はアリール基の電子状態を反映した紫外可視吸収と酸化還元特性を示すことが明らかとなった。特にジメチルアミノフェニル基が置換したTTF誘導体は高い一電子供与能を示すことから一電子還元剤として有機合成に利用できると考えている。また対応するカチオンラジカルは近赤外領域にまで吸収を示し、その吸収は1600nmにまで達する。
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