研究概要 |
ペンタセン,トリフェニレン,コロネン等のグラフェンの部分構造を有する多環式芳香族化合物(グラフェン類縁体)は,優れた電子移動特性や光学的特性を示す事から,様々な誘導体合成と機能性材料としての用途展開が行われている.一方,π電子系にヘテロ元素を有するヘテログラフェン類縁体は,ヘテロ元素の特性に由来する新たな機能発現が期待されるが,その合成は容易ではなく,多くは理論化学的研究に留まっている.そこで申請者は,これまでに開発した鉄族金属フッ化物触媒によるビアリールカップリング反応と連続的ヘテラFriedel-Crafts反応を,多重反応および逐次反応として集積化することで,ヘテログラフェン類縁体の実践的合成法の確立を目指す.今年度は,鉄族金属フッ化物触媒によるビアリールカップリング反応とリン置換基導入に引き続く連続的ホスファFriedel-Crafts反応の2工程からなるホスファナフトペリレンの合成法を応用して,拡張π電子系を有するジホスファジベンゾジフェナレニノペンタセンおよびアザホスファジベンゾクリセンの合成に成功した.X線結晶構造解析によると,前者は二重螺旋構造,後者は80°程度の折れ曲がり構造を取っていることが明らかとなった.これら湾曲構造にも関わらず,共役系が分子全体に広がっていることが密度汎関数計算により示唆されており、今後,電子デバイス材料としての応用が期待される.また,確立した合成手法はホウ素やケイ素といった様々なヘテロ元素を有する誘導体の合成にも適応可能であるなど高い応用性を有する.
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