公募研究
エステルはアルデヒドやカルボン酸と並ぶ基幹的化学原料である。しかし、活性が低いため、その変換には求核性の高い試薬を使用するか、多段階の反応を用いる必要があるなどの意外に大きな制限を受けているために、溶剤等としての利用が多い。エステルを原料とする選択的な反応経路が開発できれば、誘導体の豊富さ、入手の容易さ、安定性や安全性などの特性から大きなメリットが期待できる。その開発の突破口として下式のように還元的アリル化を完成させることを念頭に、単一触媒によるエステルを出発原料とした還元とアリルの2段階反応の集積化を計画した。との集積反応は、アルデヒドのアリル化と等価とみなすことができ、不安定で取り扱いの難しいアルデヒドを安定なエステルに置き換える手法の確立となるものでもある。還元剤であるシリルヒドリド(Et_3SiH)とアリル化剤であるアリルシラン(Me_3Si-allyl)を同時にエステルに作用させて、エステルの直接還元的アリル化を確立した。逐次的な試剤添加などの特別な操作は不要で、2種の求核剤の共存系でも還元とアリル化が、同一の反応条件で順次進行し、時空間集積触媒反応が達成できた。さらにInI_3が両段階に作用しながら、その様式が巧妙に異なることが集積化の原因であることを実証した。また、還元剤単独あるいはアリル化剤単独では、本反応条件下では、それぞれ非常に反応が遅く、集積化による反応促進効果も確認できた。エステルに二種類の異なる求核種を付加させる反応系を確立した。今後は、適応可能な求核種の探索を行うことで、本反応のコンセプトをより一般的に昇華させていく。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Organic Letters
巻: Vol.13 ページ: 2762-2765
10.1021/o1200875m
Angewandte Chemie International Edition
巻: Vol.50 ページ: 8623-8625
10.1002/anie.201104140
巻: Vol.50 ページ: 10393-10396
10.1002/anie.201104208