研究概要 |
Rauhut-Currier(RC)反応は、ルイス塩基を触媒とするα,β-不飽和カルボニル化合物のカップリング反応である。本反応は、多段階であり律速段階に炭素-炭素結合のステップとその次のプロトン移動のステップが関わっているため不斉反応への展開は困難であった。平成23年度は、環状ジエノンにアクリル酸エステル部位を導入した対称な反応基質の有機分子触媒によるエナンチオ選択的RC反応を検討した。二重活性化型有機分子触媒による本RC反応を確立するために、基質に対して、先ずは、アキラルな酸および塩基化合物による触媒スクーリンニングを行った。その結果、ルイス塩基触媒としてトリフェニルホスフィン、ブレンステッド酸触媒にフェノールを用いると目的物が収率81%で得られることを見出した。なお、キラルなブレンステッド酸触媒として(S)-BINOLを添加してもラセミ体が得られることを確認している。ホスフィン系キラル触媒を中心に検討した結果、バリンから誘導される触媒を用いると効率良く反応が進行し、光学活性な生成物が得られることを見出した。触媒の窒素置換基を精査したところ、トシル基を導入した酸-塩基型触媒を用いた場合に、目的環化体を単離収率99%、光学収率98%eeで得ることに成功した(Angew. Chem. Int. Ed. in press)。 スピロ骨格を有する二重活性化型有機分子触媒を創製し、aza-Morita-Baylis-HiIlman反応に極めて有効であることを報告した。さらに、これまでに報告例のないイミンを反応基質とするaza-MBH反応についてもブルゴーニュ大学のJuge教授らと共同で検討し、Juge教授らの開発したキラルなホスフィン誘導体により目的物を高収率・高エナンチオ選択的に得ることができた(投稿準備中)。
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