本研究は、マイクロリアクターを用いた反応場の時空間集積化を行うことにより、寿命の短い反応活性種の反応性および反応挙動を解明し、かつその制御法を創出することにより、合成化学への応用に向けての知見を得ることを目的として行った。本年度は、不安定極性反転種であるカルバモイルリチウム(R_2NC(O)Li)の反応挙動の解明と効率的捕捉を目指し、マイクロリアクターを用いて発生させたカルバモイルリチウムの低温下での高速捕捉を試みた。その結果、カルバモテルロアートPhMeNC(O)TeBuとブチルリチウムからPhMeNC(O)Liを生成させ、この溶液に素早く親電子剤(E+)を加えることにより、脱一酸化炭素によるPhMeNLiの副生を抑制し、捕捉生成物PhMeNC(O)Eが効率よく得られることを明らかにした。また、捕捉剤としてプロトン、アルデヒド、エステル、カルバモイルクロリド等の親電子剤が利用できることを明らかにし、本法がアミド基の求核的導入法として合成化学的に有用であることを示した。また、窒素上に異なるアリール基を有するカルバモテルロアートに本手法を適用し、種々の置換基を有するアミド類縁体の合成を行った。また、クロスカップリングの反応の速度論的研究を通して、マイクロリアクターが速い速度で進行する反応の速度を求める手法として有用であることを示した。特に、マイクロリアクターの速度論的研究への応用を図るべく、マイクロリアクターを利用して反応性の高い触媒活性種を経る高速度の反応の速度を求め、通常のバッチ型手法との比較により、その信頼性および有用性を検証した。
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