アミドジアニオンの創製:α、αジブロモカルボアミドを種々合成し、これをアルキルリチウムによりダブルリチオ化し、アミドジアニオンの生成を試みた。その結果ジエチルアミドやピロリジノアミドを用いることでダブルリチオ化が50~80%の効率で進行することが明らかとなった。さらにこれを様々な炭素炭素結合形成反応に付したところ、芳香族求核置換反応において所望の生成物が得られることがわかった。 イノラートを用いたカルボニル化合物のオレフィン化反応の精査:従来法ではきわめて難しいエステルのオレフィン化反応によりE選択的に多置換エノールエーテルが得られ、さらに基質のα位のヘテロ置換基が収率向上に重要であることを見出した。特に、アルコキシル基、トリアルキル基、ジベンジルアミノ基、フェニルチオ基で劇的な収率の改善に成功した。この反応機構について考察したところ、Felkin-Ahnモデルに基づき、炭素-ヘテロ原子結合の反結合性軌道がカルボニル基への付加反応の遷移状態を安定化したために、活性化エネルギーが低下したこと、さらに立体的嵩高さにより付加中間体の自由回転か阻害され、副反応(脱離反応)が抑制されたことが考えられた。本生成物を利用して酸触媒による改良ナザロフ反応を開発しα-メチレンシクロペンテノンの効率的合成法を見出した。すなわち、エノールエーテルから2段階で導かれたβ-イソプロポキシジエノンに対し、t-ブタノール存在下、塩化鉄を作用させることでほぼ瞬時にナザロフ反応が進行した。また、フローリアクターを用いてイノラートの生成を検討した結果、ステンレスチューブとマイクロミキサーを組み合わせたフロー系で低温冷却することなく短時間でイノラートを生成できることがわかった。
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