研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
22106537
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
徳永 信 九州大学, 理学研究院, 教授 (40301767)
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キーワード | 酸化物担持触媒 / パラジウムナノ粒子 / 水素スピルオーバー / ホルミル化反応 / ハロゲン化アリール / XANESスペクトル / 0価コバルト活性種 |
研究概要 |
含浸法にて調整した酸化コバルト担持パラジウム触媒を用いて触媒反応を行った。パラジウムにより反応が触媒されることが知られている臭化アリルのアルコキシカルボニル化反応を行った。この反応は固体のパラジウム触媒では初めてである。さらにハロゲン化アリールのホルミル化反応がうまく進行することを見出した。この反応も固体触媒では初めてである。また、この反応は均一系のパラジウム触媒とコバルト触媒の二成分系の触媒が協奏的に機能して触媒活性が発揮されることが知られている系でもあり、固体触媒の担体と金属の両方を働かせることに成功した。さらに、担体および金属ナノ粒子のキャラクタリゼーションを行った。我々は、既に、金ナノ粒子触媒を用いる触媒反応をいくつか報告している。担体から活性種が出る反応として、酸化コバルト担持金ナノ粒子(Au/Co_3O_4)によるヒドロホルミル化やアミドカルボニル化、ヒドロアミノメチル化、フィッシャートロプシュ反応、Pauson-Khand反応、エポキシドのアルコキシカルボニル化などを見出している。また、金ナノ粒子そのものが選択的な水素化の触媒となる系も報告している。担体から活性種が出る機構として、金やパラジウムが活性化した水素が担体である酸化物上に移動するスピルオーバー現象を起こしたのちコバルトを還元し、発生した0価のコバルトが活性種として働くことを提唱している。そこでいくつかの触媒についてパラジウムおよびコバルトのXAFS測定を行った。標準試料であるPdOやPd(NO_3)_2とXANESスペクトルの形状や吸収端エネルギーが良く一致しているので焼成したサンプル中のパラジウムは2価で存在すると考えている。また、焼成後の触媒を水素加圧下で処理したサンプルは標準試料であるパラジウム箔とXANESスペクトルが良く一致し、パラジウムは0価に還元されていると考えられる。またCo-K端XANESスペクトルをみると、コバルトも0価になっていると考えられる。しかし、すべてではなく部分的な還元に留まっている。このパラジウムとコバルトが競争的に働いて触媒反応が達成できたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった固体触媒の担体と金属両方を活性種として用いる反応が達成できたほか,触媒のキャラクタリゼーションも進展し、パラジウム、コバルトの両活性種が発生していることが確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
固体触媒の担体と金属両方を活性種として用いる反応として、アリールハライドのホルミル化だけでなくさらに他の反応を開拓すること。また、反応機構を明らかにするために、触媒のキャラクタリゼーションや速度論実験などをさらに進めること。
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