研究概要 |
グルタミン酸受容体が中枢神経系の興奮性神経伝達を担う伝達物質として認知されて以来、グルタミン酸受容体の機能研究が活発に展開され、現在では単に興奮性神経伝達ばかりでなく、記憶や学習といった脳のより高次な機能にもグルタミン酸受容体が関与しているものと考えられている。このような中、脳神経細胞機能の分子レベルで解明やアンタゴニストの構造デザイン等に関して、グルタミン酸受容体作用物質の研究が脳神経疾患治療薬開発に繋がるものとして大きな関心が持たれている。本研究では、強力かつ特異的なグルタミン酸受容体アンタゴニスト活性をもち医薬開発リードや生物学研究のツールとして有望視されながら天然から純粋な形での供給が極めて困難な状況にあるカイトセファリンを研究対象として取り上げ、革新的な分子変換法を開発することによって、天然物はもとより多様な誘導体の量的供給をも可能にする効率的合成法を確立することを目的としている。22年度は、本研究の基礎となる高度置換ピロリジン化合物の時間的反応集積化戦略に基づくワンポット合成法の開発を行った。その結果、6-アルコキシカルボニルアミノ-1-フェニルヘキサン-3-オールをスルファメート化後、Ph(II)を触媒とするC-Hアミノ化に続いて塩基性条件下Boc_2Oで処理すると,Boc化に続く連続的なSN2型の環化が起こり,ピロリジン誘導体が一挙に生成することを見出した。さらに,上記のワンポットピロリジン構築法に基づき,グルタミン酸受容体作用天然物カイトセファリンの合成研究を行い,鍵合成中間体の立体選択的合成に成功した。
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