研究概要 |
本研究ではLipshutz cuprateの電子移動酸化を用いる大環状化合物の合成を検討した。また、環状ポリアレーンは安定な有機電子材料として使用でき、さらに環状ヘテロポリアレーンは、その構造と酸化還元特性および界面における配列制御という点でそのナノエレクトロニクスにも興味が持たれているので、合成の方法論的有用性ばかりでなく、生成物の物性面の有用性も研究した。 以上の目的に沿って、Lipshutz cuprateの電子移動酸化を用いて6個のオクチル基を有する環状ノナフェニレンを合成し、さらにこのノナフェニレンからトリフェニレン三量体を合成して、その特異な自己集積能について調べた。合成したトリフェニレン三量体は中央に[18]アヌレン環を有する縮合多環ベンゼン系であるから、ナノ相分離によって溶液中で会合体を形成したり、固体状態でナノ集積体の生成が期待できる系である。今回合成した化合物は、ベンゼン環とオクチル基のみから成り立っているトリフェニレン三量体であるが、トルエンなどの無極性溶媒中で会合し、固体状態でナノファイバーを形成することを見出した。また、2,4,7-トリニトロフルオレノン(TNF)と固体状態でミクロサイズの赤色球状1:3CT錯体を生成した。そこで、電子顕微鏡(TEM)によってその構造を調べたところ、分岐構造が最初に生成し、それがデンドリマーを形成して最終的にミクロボールとなることがわかった。このミクロボールの生成機構は機能性デンドリマーの構築に適用できるので、ナノてクロノロジーとして有用なものである。
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