研究概要 |
中新世における西南日本島弧発達史には未解明な点が多い.これまでの研究から,日本海拡大・フィリピン海プレートの沈み込み開始・南海トラフ付加体の形成開始が中期中新世(~15Ma)に集中していることは明らかになっている.しかしながら,中期中新世から後期中新世にかけて(15-10Ma)の堆積岩はすべて侵食作用によって陸域から失われているため,この時期の西南日本の地史に関する地質記録はほとんど残されていない.そのため,本研究は,南海トラフの沖合に位置する四国海盆堆積物の層序・堆積相を調査し,そこから西南日本島弧地史に関する何らかのシグナルを読み取ることを試みた. 今年度の結果として,四国海盆では中期中新世後期に半遠洋性泥岩の堆積速度が突然変化していることが明らかになった.半遠洋性泥岩は深海盆へほぼ一定の速度で堆積することが一般的だが,四国海盆では,11Maを境として半遠洋性堆積速度が半減している.この現象は,IODP Sites COO11 & COO12を初めとして,これまで四国海盆で掘削されたすべてのDSDP&ODPサイトで検出された.すなわち,この時期には四国海盆全域への堆積物供給速度が半減したということがわかる. この四国海盆における突然の堆積速度変化は,西南日本島弧における何らかのテクトニックイベントに対応している可能性がある,後期中新世(11Ma)は,熊野酸性岩を初めとする西南日本島弧の異常な前弧火成活動が終息した時期に近い.また,フィッショントラック熱年代学は西南日本の付加体が後期中新世に急激に上昇した可能性を示唆している.これらの西南日本前弧域におけるテクトニックイベントの終息は,火山岩・付加体の削剥作用の減少をもたらしたはずである.来年度以降は,調査の範囲拡大・精度向上を目指すと同時に,テクトニックイベントと堆積物フラックスの関係についても考察していく.
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