研究概要 |
本年度は,以下の3つを明らかにした. 南海沈み込み帯のデコルマゾーン形成を規制しているセメント層準の空間分布とその過圧密化過程を実証するために,IODP Exp.322で採取されたコア試料を用いて沈み込み帯に持ち込まれる堆積物について不均質性評価を行った.その結果,C0011,C0012ともに明確なセメントゾーンが見いだされなかった.ただし本年度後半に行われたExp.333において掘削されたC0011上部(Exp.322で採取されなかった)においてセメントゾーンの可能性がある層準が見いだされたので,サンプルリクエストを作成している. 次年度から行う有効応力変動圧密試験機を組み上げ,キャリブレーションテストを行った.房総半島に分布する付加体試料をダミーサンプルとして予備試験を重ね,最大で5Hzの有効応力変動を与えられるように調整がほぼ完了した. 房総半島のデコルマゾーン直上の過圧密層準の物質検討を行った.この層準の間隙率は,周辺層に比べて7-8%低い値を示し,南海付加体のデコルマゾーン周辺に分布する過圧密化したセメント層準として矛盾しない特徴を示している.本研究では,さらに封圧下弾性波速度(P波,S波)を測定し,セメント層準の可能性について探った.現在までに大気圧下の測定を行ったところ,周辺のサンプルと比べ約20%高速を示し,セメント層準として矛盾しなかった.今後SEM,BSE解析を行い,視覚的に直接セメント物質を把握することを目指す.
|