本研究では、酸化物ナノ結晶上に有機分子を結合して配位結合能を付与することを目的とした。化学結合を自由度高く可逆的に制御できる配位結合を用いることで、温度、pHなどの条件で自在に集積を制御できるデバイスの構築が期待できる。既に研究申請者は、酸化物ナノ結晶の合成場にカルボキシル基を有する有機分子を共存させることで、有機分子が表面に結合した無機ナノ粒子を合成することに成功している。そこで、この手法を応用して、ナノ粒子表面に配位結合能を有する有機分子を結合させた。さらに、この配位結合能を活用して、粒子同士を複合化させたクラスター構造の形成を行った。 まず、酸化物ナノ結晶への配位結合能の付与を検討した。硝酸セリウム水溶液に、両端にカルボキシル基を有する直鎖の炭化水素であるアジピン酸を加え、流通式反応装置を用いて200~300℃、250気圧の条件で5秒程度加熱した。その結果生成したナノ粒子を精製、乾燥後、構造を走査電子顕微鏡で観察した。すると、生成したナノ粒子は70nm程度の大きさを持ち、形状は立方体状であったが、その構造を詳細に観察すると、立方体ナノ粒子は10nm程度の正8面体ナノ粒子から構成されることが明らかとなった。この正8面体粒子がどのように配列をしているか明らかにするため、立方体ナノ粒子の断面に対して走査電子顕微鏡内で電子線回折像を評価した所、正8面体のナノ粒子は向きをほぼ揃えて配列しており、結晶方位のずれはほぼ1deg以下であることが明らかとなった。本研究では、正8面体のナノ粒子が向きを揃えている理由は、1次粒子が正8面体という多面体の形状を有するためであると考え、これを積極的に利用した構造形成を次年度に目指す。
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