| 研究概要 |
本研究では、直径の定まった環状多座配位子を合成し、これを複数の金属と協同的に錯形成させることにより連結して金属錯体ナノチューブの合成を行い、チューブ内に包接された物質の移動について検討することを目的とする。一定の径や長さをもつ円筒型分子を使うことで、金属イオンをチューブ骨格の望みの位置に組み込んだ、新しいタイプの応答性のハイブリッド型ナノチューブの合成を目指す。
円筒状骨格を持つ分子として、大量合成の容易なカリックス[6]アレーンを基本骨格とする多座配位子の合成を行った。p-tert-ブチルカリックス[6]アレーンから四段階の反応によりupper rimにヒドロキシ基を導入し、クロロメチルピリジン塩酸塩との反応により円筒配位子を合成した。この円筒型配位子と各種金属イオンとの錯形成では、チューブ構造をもつと考えられる配位ポリマーが生成した。
また、ビルディングブロックとして円筒型だけでなくボックス型配位子を使ったチューブ構造の形成についても検討を始めた。キノフェナントロリンおよびピリジン部位をもつ配位子を白金(II)と錯形成させたところ、定量的にボックス型2:2錯体が生成した。このボックス状ホストは2-ヨードフェノールや2,6-ジョードフェノール等のヨードアレーン類の認識能が高いことが明らかとなった。従って、このボックス状骨格をもつチューブ構造が甲状腺ホルモンの移動場として使える可能性が示された。
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