公募研究
分子素子間の機能伝達・変換・連携といった集積体の機能の統制と効率化について、本研究では動的らせん高分子上にロタキサンスイッチを集積化した分子素子複合体を題材に研究を進めている。22年度は1)共重合による不斉伝達・増幅、2)効果的な不斉伝達のための置換基の導入位置の検討、3)ロタキサンスイッチによる内孔をもつ巨大らせん構造制御以上3点を課題とした。一方で不斉ユニットに分子不斉ロタキサンを導入したポリアセチレンにおいて、効果的に片巻きらせん構造が誘起された。これはロタキサン分子不斉を不斉場として応用した初めての例であり、課題1)や2)に関係した斬新なアプローチ法となると考え、今年度はロタキサン不斉場を用いたらせん制御の詳細検討を行った。Cs対称な輪成分と非対称な軸成分から成るロタキサンは、貫通方向の違いによりエナンチオマーが生じる。軸成分上にエチニル基をもつ光学活性な分子不斉ロタキサンを重合し、ポリアセチレンを主鎖にもつポリロタキサンを得た。輪成分を主鎖近傍に近づけると、片巻きらせん構造となり有効共役長の増大が観察された。またエナンチオマーは逆巻きのらせん構造を与えた。また、課題3)へのアプローチとして、ポリフェニレンジエチニレン主鎖の側鎖へ分子不斉ロタキサンを導入したポリロタキサンを合成し、そのらせん構造を調べたところ、輪成分を主鎖に近づけると片巻きらせん構造が誘起されることを確認した。このとき、分子不斉ロタキサンは、不斉誘起すると同時にらせん構造の安定化や溶解性に寄与しており、さらに酸・塩基応答により輪成分-主鎖間距離を制御することで可逆的にらせんの巻き方向を制御できることを見出し、分子不斉ロタキサンの不斉場を用いることで、効果的ならせん誘起と安定化が可能なことを明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
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巻: 16 ページ: 13783-13794
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http://www.op.titech.ac.jp/polymer/lab/takata/index.html