研究概要 |
カルボン酸メチルエステルを置換基に持つジチオレンを含むbis(dithiolene)Mo^<IV>O錯体およびbis(dithiolene)Mo^<VI>O_2錯体を合成・単離し、モリブデン中心とジチオレン間のπ共役性を結晶構造解析や各種スペクトルなどから考察した。 Mo^<IV>O錯体とMe_3NOとの反応により、Mo^<VI>O_2錯体を得た。このMo^<VI>O_2錯体は、v(Mo=O)_<symm>を870cm^<-1>に示した。アセトニトリル中におけるラマンスペクトル測定の結果、モノオキソ錯体はカルボン酸メチルエステル基のジチオレンのC=C伸縮を1537cm^<-1>程度に示すのに対し、ジオキソ錯体はそのC=C伸縮を1520および1540cm^<-1>に示し、ジオキソ錯体では、C=C結合により単結合の寄与が含まれることが明らかとなった。結晶解析の結果からも、C=C結合距離はジオキソ錯体(1.367(12)A)の方がモノオキソ錯体(1.356(4)A)よりも長く、C-S結合距離については、ジオキソ錯体(1.733(10),1.711(8)A)は、モノオキソ錯体(1.774(3),1.753(3)A)より短くなっていることが示された。これらの結果から、ジオキソ錯体の方が、モリブデン中心とジチオレン部にπ共役が大きく広がっていることが示された。 さらに、ジオキソ錯体は、アセトンやアセトニトリル中で亜ヒ酸に酸素原子を移し、モノオキソ錯体に変化することが明らかとなった。また、この酸素添加反応について速度論的考察を加え、反応機構を推定した。
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