研究領域 | 配位プログラミング ― 分子超構造体の科学と化学素子の創製 |
研究課題/領域番号 |
22108524
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
牧浦 理恵 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (30457436)
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キーワード | 配位高分子 / ナノ薄膜 / Langmuir-Blodgett膜 / 金属錯体 / ポルフィリン |
研究概要 |
本研究の第一の目的は、有機配位子(MBU : molecular building unit)と金属イオンとの間に形成される配位結合を巧みに利用し、配列が制御された多孔性の薄膜をナノスケールで作製する合理的手法を確立することである。また、創製した薄膜の構造や特性を詳細に調べることで、ナノスケールで起こる新しい現象や機能を開拓するとともに、センサなどの素子としての応用の可能性を探る。これまでに、溶液プロセスを基盤とした分子ボトムアップ手法により高い結晶性を有する配位高分子ナノ膜の作製に成功した。液面を利用してLangmuir-Blodgett(LB)法により配位高分子ナノシートを形成し、このシートを固体基板に移しとる工程を繰り返すことで、1層ずつ、すなわちLayer-by-Layerでシートを積層することができ、得られた薄膜は面外、面内共に結晶性であることがわかった。 本年度においては、配位高分子の面内の格子サイズを制御することを目的とし、MBUとして様々な大きさのポルフィリン誘導体を用いてナノシート及びその積層を行い、その結晶構造を調べた。また、液面で放射光XRD測定を行うことで、液面上で構成要素である有機配位子と金属イオンが配位結合を生じ規則配列しながらナノシートが形成する過程を詳細に調べた。 液面において結晶性のナノシートが形成する過程に関して詳細に調べるために、液面上で放射光XRD測定を行った。展開液にMBUであるポルフィリンの溶液、下層液に硝酸銅水溶液を用い、回折計に設置されたトラフ上にナノシートの作製を行った。表面をバリアで圧縮する過程において得られた分子占有面積に対する表面圧の変化(π-a isotherms)を調べた。表面圧の異なるいくつかの点においてin-plane XRD測定を行った結果、表面圧が低い場合においても結晶性に由来する反射ピークが観測されたことから、液面上でMBUと金属イオンとの間に配位結合が生じ、表面の圧縮なしに自発的に結晶性のナノシートが形成されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、配位高分子ナノ薄膜の形成過程に関する知見を得ることができたことに加え、計画では想定していなかった液面上でのX線回折測定が実現できたため、薄膜の形成状態に影響を与える要因に関してさらに詳細に調べることができた。
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今後の研究の推進方策 |
配位高分子薄膜の応用利用を考えた場合、電極や別の機能を有する薄膜との集積は必須である。このために、今後は異種構造を有する配位高分子ナノ薄膜の積層を行う。各配位高分子シートの構造解析を行い、それぞれの層の構造を独立に評価する。さらに、液面におけるMOFシートの構造と比較することで、異種界面状態(格子の歪み、不整合など)を明らかにする。
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