研究領域 | 配位プログラミング ― 分子超構造体の科学と化学素子の創製 |
研究課題/領域番号 |
22108526
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 鉄兵 京都大学, 理学研究科, 助教 (10404071)
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キーワード | 配位高分子 / プロトン伝導性 / アンモニアTPD法 / MIL-53 |
研究概要 |
配位高分子の新たな合成プロシージャであるPCD法を発展させ、種々の官能基を有する配位高分子内空間の構築を行い、得られた官能基導入内空間を用いた新規プロトン伝導体の構築を目指した。 1、PCD法により得た官能基を基にした新たな官能基変換・ゲスト導入 これまで配位高分子内部の酸点として、水酸基やカルボン酸基の導入は行われてきたが、これらは弱酸であり、応用範囲が限られていた。本年度はボスホン酸基を導入した配位高分子の合成を検討した。2-プロモパラキシレンから2ステップの反応により2-ボスホテレフタル酸を合成し、水熱合成法によりMIL-53型配位高分子にホスホン酸基を導入することに成功した。これは、これまで得られた配位高分子の中で最も強い酸点である。また熱重量分析などにより、得られたボスホン酸配位高分子が400℃以上まで安定であること、水、アンモニアもしくは濃塩酸に対しても安定であることなどを見出した。 2、酸性基を導入した配位高分子のプロトン伝導度および酸点のpKa評価と、伝導機構の解明 得られた配位高分子のプロトン伝導性は、これまでのカルボン酸基を有する配位高分子に比べて低かった。これまでのカルボン酸基を有する配位高分子などが、通常よりも高いプロトン伝導性を示しており、ホスホン酸基を有する配位高分子が通常の値であるともいえる。 そこで、固体中の酸点の強度を評価した。具体的にはアンモニアを配位高分子の酸点に吸着し、昇温脱離させることで酸強度を測定する、アンモニアTPD法により、酸性度を見積もった。すると、細孔内のカルボン酸基や水酸基はpKaが1~2程度の値を示し、通常のカルボン酸基や水酸基に比べて極めて強い酸性度を示した。これは、脱プロトン化された配位子が細孔内で水素結合ネットワークを構築することで安定化したためと考えられる。そしてこの強い酸性度が高プロトン伝導性を引き起こしたものと予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな官能基として強酸基を導入することに世界で初めて成功した。 それを用いてプロトン伝導性などを見出した。 さらに酸強度の測定方法を開発し、細孔中の酸点が通常に比べて高くなるという重要な知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
これまでで最も強い酸点としてホスホン酸基を導入することに成功したが、プロトン伝導性は高くなかった。ホスホン酸は強い酸とはいえ、pKaが1程度であり、オキソニウムを定量的に発生させるまでには至らない。今後はスルホン酸基を導入し、オキソニウムイオンを定量的に発生させて高プロトン伝導性め発現を目指す。
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