動的電子状態を有する金属錯体(スピン転移、磁性体、原子価異性、混合原子価など)に長鎖を導入することにより、長鎖を有する柔軟な金属錯体を構築し、柔軟な場を有する機能性金属錯体を構築することができる。長鎖アルキル鎖などにおける柔軟な分子間相互作用に着目し、長鎖アルキル鎖の運動による中心金属の電子状態に着目した。長鎖アルキル鎖を有するコバルト(II)錯体の配位子場力をクロスオーバーポイントに近づけることにより、長鎖アルキル鎖の動きに伴ったコバルト(II)錯体のスピン状態変化を初めて観測することに成功した。スピン転移や光誘起スピン転移挙動を示す金属錯体液晶の開発は、現在まで申請者らによって研究されてきた。スピン転移化合物としては中心金属イオンに鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)あるいはマンガン(III)イオンなどを用いて金属錯体液晶を構築する。また長鎖アルキル鎖の長さを系統的に変化させ、液晶特性の確立に重点を置いた構築法を確立する。スピン転移現象だけでなく光誘起スピン転移現象も観測することできるので温度によるスイッチングさらには光によるスイッチングで液晶をコントロールするなど物性評価を行った。 また本研究の目的である複合物性の評価を行うため、既存のSQUID磁束計に誘電装置、強誘電テスター、電場印加装置を組み込むことにより測定系を組み上げた。またSQUID測定用プローブを改造することにより、電場印加することのできる専用プローブの作製を行った。 さらに長鎖を有する金属錯体を金属錯体液晶としてとらえるだけでなく、柔軟な金属錯体として確立するために構造を明らかにし分子パッキングの情報などを得る必要がある。長鎖を有する金属錯体の単結晶の構造解析を行い結晶のパッキングにおける柔軟な空間場が形成されていることを確認した。
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