1.無機ナノシート積層体の作製と磁気特性の評価 分子レベルで構造が既定された磁性無機ナノシートをlayer-by-1ayer法によって積層させた構造体を作製した。具体的には、磁性ナノシートとしてCoおよびNiイオンを導入した層状複水酸化物(Co-Ni LDH;カチオン性)を、その相手としてスメクタイト粘土(SSA;アニオン性)を用いた。作製した積層構造体のXRD測定を行ったところ、得られたd値がCo-Ni LDHとSSAの単一ナノシートの厚みの和とよく一致したことから、1:1のサンドイッチ構造の形成が確認された。膜平面に対して平行および垂直に外部磁場を印加して磁化測定を行ったところ、後者の場合が磁化されやすく、前者と比較すると大きな保磁力を示した。これは、Co-Ni LDHが異方的に集積されたためであり、Co-Ni LDH積層構造体における垂直磁気異方性の発現を示す結果である。 2.超伝導ダイヤモンドの作製と特性評価 マイクロ波プラズマCVD法によって作製した水素終端ダイヤモンド(H-BDD)、陽極酸化させた酸素終端ダイヤモンド(O-BDD)、水素アニールした水素終端ダイヤモンド(H'-BDD)の3種類に関して超伝導特性を評価した。H-BDDからO-BDDへと変化させた場合、反磁性磁化率が著しく増大する一方で、臨界電流値が減少した。さらに、O-BDDからH'-BDDへと変化させた場合は、反磁性磁化率が著しく減少する一方で、臨界電流値が増加し、H-BDDのそれらとほぼ等しい値となった。終端構造の変換に伴った構造変化がなく、かつ超伝導転移温度が変化していないことを考慮すると、観測された超伝導特性の変化は、BDD表面における誘起双極子によってホール密度が増加した結果、粒界間に超伝導電流が流れやすくなったためであると言える。以上、ダイヤモンド粒界におけるピンニング効果の変調に起因した超伝導特性の制御を達成した。
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