研究概要 |
具体的内容:九州北部(志賀島,国東半島)から関西,中部,関東地方,北陸に分布している角せん石に富む岩石の調査および解析を行った。特に,九州北部の志賀島に関しては,詳細な野外調査,化学分析をおこなった。また,イタリアのフィネロかんらん岩体について調査と試料の解析を行った。日本産試料の成果と意義,重要性:日本国内の花崗岩が多産する地帯に,花崗岩の産出と関連するように広く角閃石に富む岩石が分布している事がわかった。また,北陸地方にも角せん石に富む超苦鉄質岩が産する事が明らかとなった。特に,九州の志賀島の試料の解析により,島弧深部には角せん石に富む超苦鉄質岩石が存在し,それが,花崗岩のマグマ活動に伴って,地表に上昇して来た可能性が指摘される。この事は,島弧深部に水や水に伴う元素の貯蔵庫となり得る角せん石に富む領域が存在する物的証拠である可能性を示しており,島弧の発達,大陸の形成に関する重要な情報提供となる。イタリアのフィネロ岩体の成果と意義,重要性:フィネロ岩体は従来から,含水鉱物を多産する事で有名な岩体であったが,この含水鉱物の形成に伴って,シリカ(SiO2成分)の付加が観察されることを初めて明らかにした。この点は,島弧深部において,流体の流入に伴う含水鉱物の形成だけでなく,シリカ成分に富んでいく可能性を意味している。島弧深部の物質改変や,島弧深部に存在する流体の化学組成を明らかにする上で重要であるといえる。
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