本年度は高温のマグマがマントルや地殻に貫入した場合にその上部の岩石を部分溶融させながら上昇する過程を調べる実験装置を設計、作成し、予備実験を行った。まずは作業物質の選定を行い、その結果、メルトのモデル物質としてポリエチレングリコール1000、鉱物粒子のモデルとしてガラスビーズを選定した。次に実験装置の設計、作成を行い、装置の中の詳細な温度構造の時間変化が測定できるようにした。実験セルは高さ8cm幅8ccm奥行き1cmの準2次元型のセルであり、セルの下半分は固体のワックス、上半分は固体のワックス+がらビーズの層(ビーズの体積分率は約Q.5)となっている。セルを下面から70℃で加熱すると、まず固体ワックス層の融解が進行し、熱対流が起きる。やがて、固体ワックス+ビーズ層の中のワックスの融解が開始し、ビーズの落下が起きる。ビーズの落下速度および熱対流場との相互作用の様式は、粒径に強く依存するため、ビーズ粒径を主要パラメータとして実験を行った。 実験は次の2通りの場合について行った。1つ目の実験では、固体ワックス+ビーズ層の融解が開始した直後に下面の加熱を停止させた。この場合は、熱浸食がしばらく経過し、ビーズの落下が起きた後に、熱対流および熱浸食が停止して、ワックスの固化が起きた。ワックスの固化は下降域から開始した。2つ目の実験では、固体ワックス+ビーズ層の融解が始まった後も下面の加熱を継続して行った。この場合については、ガラスビーズの粒径が100μm以下の場合は、熱浸食とそれに伴う粒子の沈降が周期的に起きのに対して、ガラスビーズの粒径が100μm以上の場合には、熱浸食が連続的に起きることが発見された。このような周期的な浸食は、固化したマグマだまりの層状構造を説明する一つのモデルの候補となりうる。
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