研究概要 |
本研究は「地殻流体」の化学的側面を補強するため,マントルウェッジ由来の捕獲岩に見られる流体包有物の化学分析,特に炭素同位体比分析を通して,マントルウェッジの物質循環系を究明することを目指している. 平成22年度の研究計画は予定通り遂行でき,マントル捕獲岩の薄片作製と流体包有物の分光分析を中心に行った.また,二酸化炭素包有物の還元実験装置の一部として導入予定であった管状加熱炉と付随装置も予定通り設置できた.この装置を用いた還元実験はおそらく世界で初の試みとなるため,予備加熱には様々な困難があった.例えば加熱炉内の温度勾配が想定以上に大きいことや,1500℃の高温に耐えうる素材の選択,還元剤と試料との接触部の工夫などである.これらの試行錯誤の結果,予備加熱に成功した. 上記のように困難はあったが研究計画が順調に進んだため,平成23年度に行う予定であった炭素同位体比分析に用いる試料の準備を平成22年度末に開始した.行ったのは,ガスクロ燃焼装置付き質量分析器による炭素同位体比分析に用いるための試料の準備である.分光分析で二酸化炭素流体の密度を精密に測定したことにより,捕獲岩の由来深度を推定することができた.この結果と平成23年度に行う炭素同位体比分析を組み合わせることにより,マントルウェッジ内の炭素同位体分布図を作成することが原理的に可能になった. 平成23年度も研究計画通りに作業を進めると予定である.ただし,炭素同位体分析に用いる予定であった質量分析器が東日本大震災による影響を受けている可能性がある.故障が無いか確認しながら慎重に作業を進める予定である.
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