研究概要 |
多くの水を含む海洋プレートが沈み込む際に発生する海溝型地震では,地震時の断層滑りにおける流体の役割が重要である.例えば1999年台湾集集地震で活動したチェルンプ断層では,掘削試料の微量元素・同位体分研の結果,高温流体の発生を示唆する相対的に高いストロンチワム濃度と低いリチウム,ルヒジウム,セシウム濃度,およびストロンチウム同位体比が報告された.この高温流体は,地震時の断層滑りによる摩擦発熱を受けて発生したもので,さらに,これは瞬時に岩石中の間隙水圧を上昇させ,断層を滑りやすくする効果.(thermal Pressurization)を引き起こしたことか予想される.そこで,本申請研究課題では,地震時の断層滑りにおける高温流体の発生およびそれが地震挙動与える影響を解明し,地殻流体が地震現象に果たす役割を定量的に理解することを目的として,実際の断層試料(中央構造線安康露頭の断層ガウジ,領家帯に発達するシュードタキライト・ウルトラカタクレーサイト)での微量元素・同位体分析,岩石の高速摩擦実験および実験前後資料の微量元素・同位体分析を実施した. まず実際の断層試料の化学分析の結果,中央構造線の試料では,比較的低温(100-200℃)で発生しうる元素・同位体異常が確認でき,領家帯め試料では,溶融に伴う元素・同位体異常が確認できた.また,後者の高速摩擦実験・分析について,含水条件での実験方法の開発を実施した.まだ試行錯誤の段階であるが,引き続き実施する予定である.
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