研究概要 |
沈み込むプレートから脱水反応により放出された流体は、一般的にその浮力のため直上に移動すると考えられているが、プレート境界に存在する蛇紋岩では剪断変形による面構造が著しく発達しているため透水率に異方性が生じ、流体移動が面構造(応力場)に制約される可能性がある。そこで、本申請研究では蛇紋岩の透水率異方性を検証する透水試験を行った。その結果,蛇紋岩の片理に垂直な浸透率は,片理に平行なものに比べ系統的に低い値を示し、封圧50MPaでは2桁程度の差が見られた。この結果は蛇紋岩など面構造が強く発達した岩石では,透水率に著しい異方性の効果が存在し、水の移動は浮力のみならず岩石の剪断面(応力場)に制約される可能性を示唆している。蛇紋岩化がみられるプレート境界では、沈み込みによる剪断変形のためプレート境界に平行な面構造が発達していることが期待される。その場合、脱水反応によりマントルへ放出された流体は蛇紋岩の面構造に沿いプレート境界方向に選択的に移動することが予想される。本研究課題では,沈み込み帯での流体循環に関し,流体移動が浮力に支配されるとの従来のモデルとは異なり,浸透率異方性の実験結果からプレート境界に上昇するとの新たなモデルを提案した。
|