沈み込み帯において流体の存在は物質移動や地震・火山活動等に本質的な役割を果すと考えられている。マグネトテリック法(以下MT法)等の電磁気学的観測手法から得られる比抵抗構造は流体の分布に敏感な物理量であり、近年注目を集めている。本研究では、沈み込み帯における流体分布の全貌について制約を与える事を目的として、観測の空白域にあたる三陸沖において海底電磁気観測を進めている。今年度は、11月に海洋研究開発機構が所有する研究船「かいれい」を用い、三陸沖において合計5台の海底電磁場観測装置(OBEM)を投入した。広域的な沈み込み帯の構造を得るため、沈み込み開始前のhorst and basinが確認される領域から三陸海岸近傍に至る幅広い領域にOBEMを投入した。また、同時に広帯域データを取得するためOBEMの改良(サンプリングレート切り替え機能の追加)も行った。浅海域(水深1500m以浅)に投入した3台のOBEMについては上記の「かいれい」航海中に回収作業を行い、全ての機器においてデータの回収を行う事に成功した。得られた電磁場データの時系列処理を行うプログラムの改良を行いつつ解析を進めた結果、短い観測期間にも関わらず精度の良い地下の比抵抗構造に関する情報(MT/GDSレスポンス)が得られている事が確認された。しかしながら、MTレスポンスは海底地形の影響によって強く歪められている事も判明した。このような環境下で正確な比抵抗構造を得るため、海底地形の補正法や海底地形をモデルに組み込んだ上で比抵抗構造を得る手法についての検討も行った。
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