本研究課題は、ナノ粒子、ナノ結晶の触媒反応が、プラズマ条件下で受ける効果を解明し、促進された系の探索を行うことを目的としている。固体触媒反応は、通常は、温度と圧力、気体流量を制御して反応を進行させる。ここで、プラズマ条件を導入することによって、励起化学種による効率的な反応が起こる可能性、あるいは、触媒表面の状態が高活性に保たれることにより、通常では進行しないような反応が進行する可能性が考えられる。一般的な触媒反応条件では、触媒反応層を高温に保つことが多く、エネルギー消費が大きい。プラズマ利用により、省エネルギー、低コスト、かつ高効率な触媒反応を実現することによるメリットは大きい。今年度は、ナノ粒子、メソポーラスマテリアルの設計・合成及び、高電圧プラズマ利用触媒反応装置の立ち上げに取り組んだ。(1)コバルト塩化物を前駆体としてCo(OH)_3ナノベルトの合成を報告した。これは従来報告されておらず、安定な物質として、Co(OH)_3を合成、報告した初めての例として、興味深い結果である。(2)Co_3O_4ナノ結晶の形状が、界面活性剤、及び極性有機溶媒の選択によって作り分けが可能であり、球状、立方体、菱形12面体への作り分けが可能であることを報告した。(3)高電圧低周波パルスを利用したDBDプラズマによる触媒反応装置を設計製作した。有機分子の酸化反応に関して検討を行い、フラスコ中に照射する条件では収率は0.3%と低いが、基質をキャリアガスによりバブリングして、蒸気として供給すると収率が約10倍向上することを見いだした。今後、ナノ粒子を触媒としてプラズマ照射下の反応を検討する。
|