公募研究
本研究では、プラズマ照射下という極めて強い非平衡状態における物質表面・界面近傍のナノスケールの自発的構造形成機構の解明と、そのナノ界面の近傍の「揺らぎ」の関係を、原子レベルシミュレーションとイオンビーム実験を用いて明らかにするととを目的とする。本年度は、昨年度に引き続き、半導体エッチングプロセスにおけるイオン照射と表面化学反応の相乗効果について議論した。イオン衝撃により、ナノメートルスケールで、原子の運動の揺らぎがきわめて大きくなり、化学反応がピコ(10^<-12>)秒程度の間、きわめて活性化し、通常の熱平衡系では得られない化学反応が誘起される。本研究では、特に、シリコン窒化膜のハイドロフロロカーボン(CHxFy)プラズマによるエッチングプロセスを例にとり、講論した。シリコシ窒化膜は、シリコンの選択酵化(LOCOS)プロセスのマスク材や、キャパシタの絶縁膜、層間絶縁膜、ゲートのサイドウォールのような保護膜、ひずみシリコンのFETチャネルを形成するためにキャップ層材料、エッチングやCMP(化学機械研磨)プロセスのエンドポイント検出膜(ストッパ膜)等として、様々な半導体デバイスに用いられている。窒化膜エッチングの表面反応過程を分子動力学シミュレーションによって解析し、シリコン窒化膜エッチングプロセスにおける水素の殺割を解明することを目的とした。シミュレーションでは、Si_3N_4の基板の数値モデルを作成し、入射イオン種として、CH_2F^+など、数種類のイオン種を一定の入射エネルギーでモデル基板に照射した際のスパッタリングイールドや表面状態を計測した。これらの結果より、入射イオン中の水素は、窒化膜上に堆積される炭素膜の厚さの調整に大きな影響を与えることが明らかとなった。
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