液体中や超臨界中における微粒子作製法の一つが、母体となる固体材料のレーザアブレーションである。特に、超臨界媒体中でのレーザアブレーションは、気相や液相の場合に比べ、プラズマ体積が小さいだけでなく、高圧容器の観測域も狭いことから、その振る舞いを計測する手法が望まれていた。また、現状では、超臨界媒体の臨界点近傍における特異な性質が、どのような形で媒体の密度変化に影響してくるのか実際の計測に基づいた学術的議論が究めて少ない状況であった。そこで、本研究では、固体のレーザアブレーション時における位相媒体の密度変化を光波マイクロホンを用いて計測した。昨年度は、主に気相中における最も基本的な計測を行い、本手法を用いることで、光熱音響波、衝撃波、微粒子による媒体の屈折率変化が観測できることを明らかにした。本年度は、超臨界二酸化炭素中での固体のレーザアブレーションに適用し以下の結果を得た。気体から趙臨界状態まで連続的に加圧する場合、臨界点近傍でレーザ光の散乱が最も強く透過光が無くなることから、臨界点を確認することができた。固体ターゲットにアブレーション閾値より弱いエネルギーでパルスレーザを照射した場合、音速で到達する光熱音響波が観測された。超臨界中では、音速の密度依存性が顕著となった。密度が十分高い場合は、音速は液体のそれと同等であったが、密度が臨界密度付近になると音速は気体のそれより遅くなった。これは、臨界点近傍で等温圧縮率が発散するという理論計算の実験的裏づけと言える。また、アブレーション時は衝撃波が観測されるため、アブレーション閾値を確認することができた。これは、特に実際のレーザアブレーション適用時における固体表面の変化やパルスレーザ出力の変化によるアブレーションのばらつきをリアルタイムでモニタリングするのに有効である。また、衝撃波の後に遅れて発生する2つ目の衝撃波と考えられる信号も見られた。これは、最初の衝撃波の負庄により気相泡ができたことに起因すると考えられる。
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