公募研究
医療器具を介した感染が院内感染の主要部分を占めるなか、高圧蒸気滅菌などの既存の滅菌方法では、医療器具や機器は処理に耐えられないことが問題とされている。近年これらの機材に対応可能な過酸化水素ガスプラズマ滅菌方法が提案されているが、毒性残留物の危険性などが指摘され始めている。さらに細菌由来のエンドトキシンの残留は、発熱などの症状を引き起こすが、過酸化水素ガスプラズマ滅菌ではエンドトキシンには効果がないと報告されている。そのような中、本研究は、N_2ガスプラズマをナノ粒子であるウイルスやプリオンと反応させることで、これまでに研究されてこなかったウイルス学分野にナノ界面プラズマの研究展開をはかることを目的とした。昨年度までに、本研究で使用しているN_2ガスプラズマ装置について、熱、紫外線、酸化ストレスが装置稼働時に発生していることを明らかにした。さらに、エンベロープウイルスであるインフルエンザウイルスをプラズマ処理し、プラズマ処理によりウイルスが不活化されることを示した。平成23年度は、インフルエンザウイルスがプラズマ処理により不活化されるメカニズムを明らかにするため、プラズマ処理時に発生する熱、紫外線、酸化ストレスの3殺菌因子がインフルエンザウイルスを不活化するのにどの程度寄与しているのかを明らかにすることを目的に解析を行った。その結果、N_2ガスプラズマ処理(1.5kpps)により、インフルエンザウイルスは5分以内に効率的に不活化された。この不活化メカニズムとしては、酸化ストレスが最も寄与しているものと考えられた。
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