エッチング中のナノ構造形成プロセスをモデル化し検証することを目的に、プラズマエッチングで発現するDLC薄膜表面のナノ構造を分析した。プラズマスパッタによる金属微粒子の付着とプラズマエッチングを組み合わせた実験装置を作製し、エッチングに用いる酸素RFプラズマの基本的な特性を測定した。アセチレンガスを原料としてRFプラズマCVD法を用いて、Siウエハ上にDLC薄膜を合成し、Niスパッタと酸素プラズマエッチングによりナノサイズのウィスカー形成に成功した。しかしNiスパッタがなくても繊細なDLCウィスカーが一面に形成されたことから、酸素プラズマによるDLCのエッチング過程についてさらに詳しく調査し、エッチングでナノ構造が形成されるメカニズムを考察した。高分解のSEM観察からウィスカー先端が円錐形状をしていることを見いだし、中央部分が細くくびれている形状から、先端部へのチャージアップによりシースで加速されたイオンの軌道が曲がるというモデルで説明できると考えた。 作成したDLDナノウィスカーについてEDSによる組成分析、ラマン散乱分光による評価、電界電子放出特性の評価を行った。EDSでは微量な銅が検出され、エッチング中にステージがスパッタされている可能性が見いだされたが、ウィスカー形成に直接関与するものかどうかは結論できなかった。電子放出は確認されたが、最大許容電流値は1nA程度と小さかった。
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