研究概要 |
本研究ではプラズマを使った微細領域処理によりポリマーを機能化することを大きな目的としている.その中でもバリア性は材料物性でも重要な特性であり,表面プラズマがポリマーのバルク物性に与える影響について研究した.当該年度においては特に液体バリア性に着目し,その目下の応用分野である薬剤徐放を視野に入れた研究を実施した.血管狭窄に対する血管内カテーテル治療では,「薬剤溶出ステント(DES)」と呼ばれる金属製の網状の筒を狭窄部で拡張させ血流を回復し治療する手法が主流である.しかし,薬剤溶出ステント留置後の晩期では血栓症にともなう血管再狭窄が多数報告され重大な問題となっている.そのためステント表面が生体適合性に優れ,薬剤溶出速度が制御可能であり,さらに長期間薬剤溶出が保証されるDESの開発が求められている.我々はプラズマ化学蒸着法のアセチレンガス導入によって得られるダイヤモンドラークカーボン(DLC)薄膜が生体適合性に優れるばかりでなく,バリア性も有する点に着目した,DLCと薬剤含有生体適合性ポリマーの複合化により,薬剤の溶出性能を精度高く制御できる可能性がある.本研究では生体適合性に優れた親水性の2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC),疎水性のエチレンビニルアセテート(EVA)などを薬剤担体として選択した.ポリマー上にDLCを蒸着する際にメッシュを用いてマスキングすることで,マイクロサイズの格子状パターンを施した.格子サイズの異なるメッシュを用いることによりDLC被覆面積を調整し,DLC被覆面積により薬剤溶出量が制御可能か確認した.また,膜として蒸着されない酸素,アルゴンガスを用いて,同様の方法で処理面積を調整し,薬剤溶出量に与える影響も調べた.ここで薬剤含有ポリマー上の被覆面積率により薬剤の抑制効果を確認した.またEVAにおいてはアルゴンプラズマ処理面積率により,薬剤の抑制効果を確認した.
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