公募研究
ナノ構造物は、サイズ効果により極めて特異的な性質を持っため、研究開発や応用が進んでいるが、その形成機構は不明な点が多く、制御方法に関しても十分には進んでいない。特徴的なナノ構造物の作製法として、低温液体中のアーク放電(液中放電)によってCNTが生成可能であることが注目されている。これは、CNTの形成や特性の決定に、反応場の温度が強く関与しているとする実験結果や分子動力学法を用いた数値シミュレーション結果を利用したもので大きな冷却効果が見込め、特異的な性質のナノ構造物を大量に作製できる可能性を持つ。本研究では、超流動状態液体ヘリウム中で放電によってCNTを作製することを試みる。このとき、高速度カメラや発光分光器を利用して成長機構の観測を行うことによりCNTの成長機構を解明するとともに制御性良くCNTを作成する方法を開発する。これまでの研究結果から、超流動液体ヘリウム中で、放電によって、作製される量は少ないものの多層CNTの作製に成功した。超流動液体ヘリウム中の開閉放電や、パルス高電圧放電の放電特性を詳細に調べた。また、同時に、プラズマの発光スペクトルを計測し、プラズマ中のラジカル発生状況との相関を調べた。このときの高速度カメラによる測定結果から、低電圧の開閉放電やインパルス放電時には、プラズマの発生と同時に、衝撃波と気泡が発生することが分かった。超流動液体ヘリウム中では、気泡の拡大と収縮が数10msの周期で繰り返されることが分かった。CNT作製時の制御性を向上させるために、4Tの強磁界中で作製実験を行ったところ、これまでよりもCNTの作製効率が向上することが分かった。一方、期待していた成長初期のCNTや成長速度の制御、これまでとは大きく異なる構造や特性を持つカーボンナノ構造物の作製はできなかった。
2: おおむね順調に進展している
CNTの実験に関しては、計画通り進んでおり、放電時の物理現象(バブルの発生や放電特性、温度の伝達)に関しては、当初の予想以上の速度で進んでいる。特に、超流動状態で強磁界中の実験を行った点は新規な実験であると思われる。しかしながら、当初に掲げた「新しい構造や特性を持つCNTの発見」には至っておらず、成長の制御や抑制も十分に行えていない。その点を加味し(2)おおむね順調に進展している、とさせていただいた。
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Trasactions of the Materials Research Society of Japan
巻: Vol.36[3] ページ: 455-458
巻: Vol.36[3] ページ: 479-482
巻: Vol.36[2] ページ: 495-498
Japanese Journal of Applied Physics
巻: Vol.50 ページ: 08JD09
10.1143/JJAP.50.08JD09