研究領域 | 背景放射で拓く宇宙創成の物理―インフレーションからダークエイジまで― |
研究課題/領域番号 |
22111503
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川良 公明 東京大学, 理学系研究科, 准教授 (50292834)
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キーワード | 宇宙背景放射 / 銀河形成進化 / 宇宙論 / 遠赤外線放射 / 銀河散乱光 |
研究概要 |
宇宙可視光背景放射(COB:Cosmic Optical Background)には、赤方偏移6から現在までに、放射された紫外線および可視光のすべてが含まれている。原始銀河雲(ビルディグブロック)が衝突合体して銀河に成長していくときに放射される紫外線、これから集積して銀河となっていくビルディグブロックからの紫外線、銀河間空間にただよう星、ガス、ダストなどによる放射あるいは散乱光など、赤方偏移6以下の過去に起こった現象のあらゆるものがCOBに記録されている。研究計画AO3の目的は,宇宙赤外線背景放射(CIRB)の観測に基づき、暗黒時代(z~10)に出現したと考えられている初代天体(PopIII)の性質を明らかにすることである.暗黒時代の光は1ミクロンより長い波長に赤方偏移しており、可視光では見えない.この時代にPopIIIが大量に生まれたのであれば,宇宙背景光のスペクトルは可視光から近赤外線に向かって急激に不連続的に増大するはずである.本研究によるCOBの観測はこの仮説を証明するための決定的な証拠を提供する. 上の目的を達成するために、(1)東京大学木曽観測所シュミット望遠鏡を用いた地上観測とそこで取得したデータの解析、(2)パイオニア探査機が3天文単位以遠で取得した撮像データの解析、(3)ハッブル宇宙望遠鏡で取得されたスカイのスペクトルデータの解析などを行った。 その結果、(2)の試みおいて、COBの検出に世界で初めて成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
パイオニア10・11号によるデータの解析で、宇宙背景放射(COB)の検出に成功した。COBを検出する試みは1960年代より世界中でなされてきたが、検出例は皆無で、本研究で初めて検出に成功したものである。
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今後の研究の推進方策 |
検出に成功したが、まだ誤差が大きく、銀河形成史に対して強い制約を与えるに至っていない。短期的には、ハッブル宇宙望遠鏡で観測された膨大なスカイデータの解析と、地上観測により誤差を絞り込む努力を行い、長期的には、太陽系小惑星帯の外側における宇宙可視光測定に向けた研究計画を推進したい。
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