本研究では、電波天文学用サブミリ波帯電磁波検出器に要求される高品質なNbN/AlNx/NbNトンネル接合の実現を目指している。そのために、Alのプラズマ窒化によるAlNxトンネル障壁層形成方法及び、トンネル障壁層近傍の超伝導性に着目した検討を行い、実用に耐えうる特性を持つ接合を実現する。平成22年度は、Alのプラズマ窒化障壁法として、従来のプラズマ窒化法及びラジカル窒化法による接合特性の比較を行った。その結果、ラジカル窒化法による接合の方が、サブギャップリーク電流が小さいこと及び接合臨界電流密度の窒化時間依存性が小さく制御性が高いことがわかった。これらは、窒化時に、プラズマ中のイオンの影響がないことによると考えられる。さらに、接合ギャップ電圧の改善に向けてNbN/AlNx/NbN三層膜形成条件の検討を行った。これまで得られていたギャップ電圧は4.3mV程度と本来のNbN接合の~5.5mVに比べ低く、これは主として上部NbN層の超伝導性劣化によるものと推測された。そこで、上部電極形成時に基板温度を上昇させることにより、その影響を評価した。その結果、基板温度を300℃まで上昇させたとき、4.7mVまで上昇させることに成功した。しかし、400℃まで上昇させると、接合特性の劣化及びギャップ電圧の低下が起こった。このことから、最適な基板温度が300℃付近に存在することがわかった。また、もうひとつの取り組みとして、基板温度は従来の室温で、上部NbN層堆積条件の検討を行い、0.1mVのギャップ電圧上昇を得た。その他、接合作製プロセスの見直しを行い、歩留まりの改善を図った。
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