本研究では、電波天文学用サブミリ波帯電磁波検出器に要求される高品質なNbN/AlNx/NbNトンネル接合の実現を目指している。そのために、代表者らが提案したAlのプラズマ窒化によるAlNxトンネル障壁層形成方法を用いるとともにトンネル障壁層近傍の超伝導性に着目した検討を行い、実用に耐えうる特性を持つ接合を実現することを目的としている。 平成23年度は、NbNジョセフソントンネル接合のギャップ電圧及び臨界電流密度の向上を目的として、電極NbNのスパッタ堆積膜形成条件及びAlNxトンネル障壁層形成条件を変化させて接合を作製し、その制御性・再現性・均一性を含め特性評価を行った。その結果、上部NbN層の超伝導特性は、スパッタ堆積時の窒素分圧及び全ガス圧の増加及び基板温度の上昇により大きく改善されることがわかり、目標のギャップ電圧を達成した。臨界電流密度については、Al堆積速度の低下によるAl膜厚の制御性の改善、及び、プラズマ窒化時のRF電力密度を変化させることにより、臨界電流密度及び再現性の向上に成功している。また、Al膜厚のある程度までの増加は、臨界電流密度向上に有効な手段であることを見出した。さらに、接合の下部NbNの膜質及び表面構造を制御することにより、サブギャップリーク電流の低減と同時に、接合特性のばらつきを極めて小さく抑えることに成功した。一方、検出器及びその他デバイスの設計に不可欠となる接合容量の評価を行い、容量パラメータを抽出した。また、その結果から、エピタキシャルAlNトンネル障壁にくらべ障壁高さが小さい可能性があることがわかった。さらに、光子誘起トンネル現象を利用した超伝導トンネル接合素子型検出器を設計・試作を行った。
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