研究概要 |
銀河の形成と進化がどのように起こったのかを解明することは現代宇宙物理学の最大の挑戦の一つであり、可視赤外線領域宇宙背景放射の起源解明と密接に関連した問題である。今後、ALMA 30m級望遠鏡やJWST,SPICAなどによって、ダークエイジに迫る宇宙初期の銀河形成が観測的に明らかになっていくであろう。これらの膨大かつ広範な観測データを解釈し、科学的、物理的に意味のある成果に結びつけるには比較すべき理論モデルが不可欠である。現在、星からの直接光をみる可視・近赤外領域では、銀河の形成進化モデルは相当高度なものに発展しており、一通りの成功を収めているが、星間ダストからの放射を見る中間・遠赤外領域の理論モデルはまだ発展途上であり不定性が大きい。本研究は、この「ダストで隠された銀河形成進化史」を明らかにし、ALMAを通じてダークエイジに迫るために必要不可欠な、宇宙論的構造形成論に基づいた物理的・現実的な赤外線領域の銀河理論モデルの構築を目指した。 昨年度の研究で、「あかり」の近傍銀河カタログ)と、既存のSDSSや中性水素21cm線などの銀河カタログやその物理量を相関させ、ダスト放射の性質と物理量との大サンプルを構築した。さらに、その中から有効な相関関係が見出され、これにダスト放射理論を組み合わせ、「赤外線銀河のダスト温度がどういう物理で決まっているか」という問いに一定の答えを与えることができた。本年度は、その昨年度の研究で得られた知見を宇宙論的銀河形成モデルに応用し、その示唆を検討した。特に、ALMAの時代を見据えて、サブミリ域での現在の理論モデルと観測データの差異をどう解決するかを検討した。宇宙論的銀河形成論の枠組みで、我々が導入した新しい星形成フィードバックが大きな影響を与えることを見出し、現在論文を準備中である。
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