宇宙背景放射(CMB)の偏光分布の渦パターンであるBモードを測定する事は、初期宇宙の非常に高いエネルギースケールの重力波による時空の歪みを検出する有効な手段である。Bモード測定の検出感度としては、最終的に小型衛星等に搭載してWMAPの100倍の感度を目指している。このように小型衛星に測定器を搭載するためには、高密度な検出器が必要である。またBモードの測定の対象周波数は最もフォアグランド(CMB測定のバックグランド)の少ない90GHz帯を選択する事になるが、低周波側で主となるダストや、高周波側で主となるシンクロトロン放射から来るフォアグランドを評価し観測温度から差し引くためには、60~300GHzにいくつかの観測周波数を設けて評価する必要があり、必然的に光学系もこのような非常に広い帯域特性が必要となる。偏光分布の渦パターンであるBモード測定用小型衛星に搭載するためには、非常に高密度な検出器と光学系が必要である。本研究では負の屈折率を持つスーパーレンズなどのメタマテリアルを利用した、大幅な高密度化を検証するものである。 本年度は、電磁波シミュレーションにより3次元のスーパーレンズ・アンテナ等の検出器面光学系の設計を行った。ここで検出器が単色の場合のみを考慮し、高密度化の検討を行った。このようなスーパーレンズの最大の課題は真空側との適合や伝搬特性などによる効率である。これを改善するためには表面適合形状が重要であり、表面適合形状として、針状の穴を多数開ける構造を検討した。 さらに、このようなフォトニック構造の形成や針状の穴を開けるため、シリコンウェハーの加工方法の試験を行った。
|