本研究は、将来の小型衛星を用いた宇宙背景放射(CMB)偏光観測に向けて、観測機器(偏光計)の較正の際に参照源として用いる天体/銀河の偏光特性のデータを従来より遙かに高感度で取得する事を目的とする。衛星実験では、重量、サイズ等の制限から人工の機器や較正源を搭載するのが難しいため、これらの参照源のデータは貴重であり、広く次世代の衛星実験に採用されると期待できる。 本年度は、昨年度に引き続き観測機器の精密較正のための基準偏光源の開発を行った。一つは、ガン発振器を用いた較正源である。ガン発振器から発射されるミリ波はほぼ100%直線偏光しており、発射口である導波管の方向を重力に対して精度よく抑えておくことで、偏光角に対する基準波となる。開発後実験室にて基本特性及び較正に関する系統誤差を評価し、十分な性能を有している事を確認した。現在POLARBEAR実験サイトにて、実際の検出器を用いて最終的なチェックを行っている所である。すでにPOLARBEAR受信機(150GHz帯)を用いて、天体(Tar-A等)や銀河面のデータは収集済みであり、チェックが終わり次第較正データを天体/銀河面のデータに適応して結果を出す予定である。 また、昨年度開発した機械式冷凍機と黒体源を組み合わせた基準偏光源に関しては、原理検証を終え、POLARBEAR実験のアップグレード計画であるPOLARBEAR-II実験で使用する受信機の性能評価に使用する予定である(基準偏光源の詳細は研究発表・雑誌論文2参照)。 これらの成果は国内及び国際学会やウェブ等で報告している。
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