本研究では、蛍光イメージングを用いた細胞内シグナルの可視化技術により受精における卵側からの精子機能調節機構を明らかにすることを目的とし、カタユウレイボヤ精子運動活性化、走化性遊泳、卵到達時に精子細胞内で起こるシグナル変化に着目して研究を推進した。平成23年度は、22年度に引き続きカタユウレイボヤ精子運動活性化シグナル伝達経路の解明を目指した。カルシウムイメージングと運動解析を行うことにより、卵由来因子SAAFと細胞内cAMP上昇、過分極はいずれも精子運動活性化を引き起こすが、卵由来因子SAAFのみが可溶型アデニル酸シクラーゼによって制御されるカルシウムの振動を引き起こすことを明らかにした。これらの成果については日本動物学会第82回大会および領域会議において報告した。また領域内外の共同研究を活発に行い、ホヤ、ウズラ、イモリ、アサリ精子の運動制御機構を明らかにし、日本動物学会第82回大会、平成24年度日本水産学会春季大会で成果報告を行った。名古屋大学との共同研究により、カタユウレイボヤ自家不和合性において精子が卵側の因子を認識する際のカルシウムイメージングを行い、精子の自己非自己認識にカルシウムが関与していることを明らかにし、この成果は米国科学アカデミー紀要(PNAS誌)に掲載された。
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