研究概要 |
今年度得た主な成果は下記の点である。 1.先体反応過程における膜分子の迅速な移動を解析するため、live cell imagingシステムを構築し、calcim ionophore誘導の先体反応を解析した。精子先体膜分子1型シアロ糖タンパク質Equatorin(EQT, MN9)遺伝子にEGFPをつないだ遺伝子改変マウス(EQT-GFP-TGマウス)を用いた研究を行った。体内受精条件下で、EQT-GFP-TGマウス精子を用いた受精卵内の挙動と運命を可視化した結果、EQTの一部は先体反応過程で先体膜から離れるが、多くは残存して卵形質内に移動することがわかった。先体膜の裏打ち構造との関係を検索するために走査型および透過型電子顕微鏡を用いて、Equatorinに対するMN9抗体およびEQ_<70-83>抗体を用いた免疫電顕でも比較した。さらに、先体膜に局在することがわかっているIzumoとSamp32に対する抗体を用いて、FACS/Cell Sorterを用いて比較解析した結果、Samp32>Izumo>EQTの早さの順で精子から消失あるいは特異的な位置移動することが分かった。これらの結果は、今後、精子膜上の分子移動の制御機構を明らかにするための、分子レベルおよび微細形態レベルの基盤となる。 2.現在、卵活性化候補分子はPLCzと考えられている。PLCzと同じ分布を示すと予測された核周囲物質(PT)MN13分子に対するMN13抗体を用いて、PT形成不全モデルマウス(球形頭部精子を示すGOPC欠損マウス)および球形頭部精子を示すヒト不妊症患者精子における卵活性関連分子と関連構造の精巣内発現(どの細胞から発現するか)およびPT(卵活性関連構造)欠損に至る過程を明らかにし、国際誌に発表した(Hum Reprod, 2010)。その後、供与されたPLCz抗体を用いて精子における分布をMN13と比較解析したところ、両者が精子の後先体領域を特異的に染色され、密接に関連することが分かった。しかし、膜処理方法によって両者の発現が変わることも見いだしたので、今後その詳細を検討する基盤ができた。 3.精子CD9を初めて発見し発表した(Cell Tissue Res, 2010)。その結果は配偶子相互作用の新知見となる。
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