公募研究
有性生殖では、雌雄のゲノムが融合して遺伝的多様性を生じること(すなわちアロ認証)が種の維持にとって有利に働くが、これは核ゲノムにおける有利性であり、細胞内共生に由来するミトコンドリアゲノムおよびプラスチドゲノム(植物のみ)では多様性が逆に不利になるため、片親のみから遺伝する。片親遺伝の多くは母性遺伝であり、雄性配偶子におけるオルガネラの挙動が鍵となる。本研究ではモデル植物シロイヌナズナを用いて、申請者らが最近明らかにした植物の雄側配偶子におけるオルガネラゲノム分解システムに関する研究を行った。これまでの研究で花粉特異的に発現するDPD1エキソヌクレアーゼを同定し、DPD1が被子植物で進化した雄側DNA分解の主動因子であることを明らかにした。今年度は、DPD1の花粉特異的発現が転写後制御による可能性について検討し、制御因子として機能未知のマイクロRNAであるmiR420が関与する可能性を示すデータを得た。さらに、分子遺伝学的な解析により、オルガネラDNA分解に関わる別の因子としてDPD2を同定した。DPD2は核酸合成の律速段階であるリボヌクレオチドを還元する酵素のサブユニットをコードしており、より詳細な解析により、ヌクレオチドレベルがDPD1の活性に影響を与えることを示唆するデータを得た。以上の結果は、DPD1の重要性を強く示唆する一方で、母性遺伝への直接的関与を指示する結果ではない。そこで本年度は、DPD1の発現により母性遺伝をコントロールできるかどうかをプラスチド両性遺伝型の植物であるタルウマゴヤシを用いて調べる実験系を構築して解析を進めた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
Plant Journal
巻: (in press)
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