アフリカツメガエルの卵細胞を用いて、配偶子間認識と融合の分子機構を明らかにするための以下の実験を行った。卵細胞膜マイクロドメインに局在する膜貫通型タンパク質ウロプラキンIII(以下、UPIII)の細胞内局在に関する生化学的・免疫組織化学的解析を行ったところ、UPIIIは卵巣組織における卵細胞形成初期からタンパク質発現をしている一方で、卵細胞表面における発現は排卵後の未受精卵に限られることを示唆する結果を得た。このことは、精子受容体の候補分子であるUPIIIの機能的発現メカニズムの観点から興味深い。今後はUPIIIの卵細胞状における発現の実体をさらに詳細に解析し、卵形成期のどの時点で精子を受容することが可能になるかという点と合わせて明らかにしていきたい。また、UPIIIのヒトホモログを発現する各種ヒトがん細胞株を用いて、血清飢餓抵抗性の細胞増殖機構を明らかにするための以下の実験を行った。膀胱4種、結腸1種、および腎臓1種のそれぞれのがん細胞において、血清飢餓環境下でのタンパク質リン酸化酵素Srcの活性化状態、および細胞増殖におけるSrc依存性を解析したところ、3種類の膀胱がんで、Srcの活性化とSrc依存的な細胞増殖が観察された。このことは、膀胱がん細胞がUPIII/Src依存的血清飢餓抵抗性メカニズムを普遍的に有している可能性を示唆しており興味深い。以上の研究成果の一部は、Zoological Scienceの原著論文1報として2011年中に公表される予定であるとともに(in press)、Molecular Reproduction and Developmentから招待されて作成中の総説論文1報として発表される予定である(投稿中)。
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