研究概要 |
アフリカツメガエル配偶子を用いた試験管内受精実験により、卵細胞膜マイクロドメインに局在するタンパク質の受精成立(アロ認証)にかかわる生理機能についての理解が深まった。具体的な成果(4項目)は以下の通りである。1.精子依存性の受精シグナルの受容体として卵ウロプラキンIIIが主要因子であることが示された。2.卵ウロプラキンIIIを発現するヒト培養細胞293から調製された膜マイクロドメインに精子受容機能が再構成されることが示された。3.未成熟卵母細胞から調製された膜マイクロドメインには成熟卵(未受精卵)に見られるような受精シグナル受容能(精子依存性の卵チロシンキナーゼSrcの活性化、カルシウム反応誘導能など)が欠落していることが示された。4.ウロプラキンIIIおよび他の膜マイクロドメイン構成タンパク質の発現状態(例えば卵表層外部への表出)に卵成熟の前後で違いのあることが示された。以上の結果について、論文の発表(3件:Mahbub Hasan et al. 2011, 2012a, 2012b)および発表準備をしている(2件:Ijiri et al. 2012、Sato et al. 投稿準備中)。また、ヒトがん細胞をモデル系とするウロプラキンIIIおよびSrcを介するアポトーシス抵抗性増殖機構の理解も進んだ。すなわち、血清飢餓ストレスに対する抗アポトーシス機構の中核としてSrcの活性化→HB-EGFリガンドの発現亢進→ウロプラキンIIIの部分消化/EGF受容体キナーゼの活性化→Srcの活性化(陽性フィードバック)→HGF受容体キナーゼのリン酸化→抗アポトーシス機構の発動、といった一連の新規のシグナル伝達機構が働くことが明らかとなった。これらについても論文発表を準備している(2件:Kihira et al. 2012、Mahbub Hasan et al. 2012c)。
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