生殖過程におけるペルオキシソーム形成と機能の役割を明らかにするために、花粉のペルオキシソームがGFPあるいはRFPで可視化された形質転換シロイヌナズナを用いて、ペルオキシソーム変異の影響を解析してきた。ペルオキシソーム変異をもつ花粉は、in vitroでは発芽はできるものの、in vivoでは野生型と比べ花粉の発芽や、乳頭細胞への侵入、花粉管の伸長速度が低下することが明らかとなった。Reciprocal cross testにより、雌雄どちらの配偶子にペルオキシソーム変異の影響がでるか検討したところ、雌性配偶子よりも雄性配偶子に影響を及ぼす傾向があることが明らかとなった。また、生殖過程におけるペルオキシソーム機能を明らかにするために、花粉に存在するペルオキシソームタンパク質の検討を行った結果、脂肪酸代謝に関わるβ酸化系酵素、および過酸化水素除去に関わる酵素の蓄積が認められた。そこで、過酸化水素濃度をモニターできる蛍光タンパク質であるHyperを花粉のペルオキシソームで発現させ、花粉の発芽および花粉管伸長過程における濃度変化をおったところ、花粉管伸長が進むにつれて過酸化水素の濃度が上昇することが明らかとなった。これらの結果から、生殖過程におけるペルオキシソームの機能として、脂肪酸に由来するエネルギーやシグナル分子の生成、過酸化水素などの活性酸素種の濃度調整が示唆された。 現在、ペルオキシソーム由来の過酸化水素を介したCa2+の濃度調整との関係を明らかにするために、蛍光プローブYC3.60を発現させた形質転換体を作製している。また、脂肪を蓄積しているオイルボディ、およびペルオキシソームの動態に関与するアクチンフィラメントをペルオキシソームと同時に可視化させ、その動態解析を進めている。
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