公募研究
Alzheimer病の発症原因のひとつとして考えられているタウタンパク質は、正常時には細胞内の微小管に結合し、微小管の重合の促進や安定化に寄与している。しかし、DYRKなどのリン酸化酵素により過剰リン酸化を受けると、微小管への結合能を失い神経原線維化する。最近、プロリン異性化酵素のPin1がタウタンパク質の神経原線維化を阻害するという事例が多数報告されている。Pin1はWWドメインとPPIaseドメインから構成されるタンパク質で、両ドメインともpS/pT-P配列を標的としている。一方、神経原線維化ではタウタンパク質のS/T-P配列のリン酸化が検出されており、Pin1のいずれかひとつの、あるいは、両方のドメインとの相互作用が機能的に働いていると考えられているが、現状では推測の域を出ない。そこで、本研究では、タウタンパク質の17箇所のS/T-P配列について、その前後4残基を含む10残基のリン酸化ペプチドを合成し、全長Pin1及び各ドメインのみの変異体との相互作用を蛍光偏光解消法および表面プラズモン共鳴法により解析した。結果として、全長Pinl及び各ドメインのみの変異体のいずれについても、17種類のリン酸化ペプチドと安定な結合を形成しうるほどの強い相互作用は観測できなかった。このことは、S/T-P配列が相互作用部位とするならば、Pin1の単なる結合がタウタンパク質の神経原線維化を阻害しているのではないということ示唆している。
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Nature Communications
巻: 1 ページ: 1-9